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◆ 生命保険金と遺産相続 ◆弁護士:玉村 匡 (2011.10.07)

被相続人(たとえば親)が他の相続人(たとえば兄)を受取人として指定した死亡保険金は、常に遺産分割の対象から除外されてしまい、自分には廻ってこないのでしょうか?
 
→ いいえ。相続人が受け取った生命保険金を「特別受益」に準じて、遺産分割の対象として「持ち戻し」が認められることがあります(最高裁平成16年10月29日判決)。
 
 そして、それは、概ね以下のような場合であると考えられます。
@ 生命保険金の金額が、その他の遺産の総額と比較して、概ね45%以上をめていること
A 生命保険金を受け取った相続人(たとえば兄)が、被相続人(たとえば親) 生活の面倒を見てもらっていたとか、介護などを献身的に行っていたなど、該相続人(兄)が他の相続人(姉・私)と比較して、特段たくさんの遺産をさなければならないという特段の事情のないこと
 この2つの条件を満たしておれば、生命保険金は、特別受益に準じて「持ち戻し」の対象となり、遺産分
割において分割の対象財産に含まれるといえるでしょう。そうすると、あなたも保険金の一部を遺産として
受け取ることが出来ます。

解説
1) 相続と生命保険金受取人

 相続が生じた際、生命保険金の受取人として「死亡した被保険者以外の人」(たとえば兄)が受取人として指定されている場合、その生命保険金は、相続の対象にはならず、そのまま受取人(兄)がもらえるということは、一般的によく知られていることだと思います。その理由は、保険金が、「保険契約」の履行によって取得されるものであるからです。

 しかし、仮に、複数いる相続人(たとえば、兄、姉、私)のうち1人だけ(兄)が生命保険金1000万円の受取人に指定されており、生命保険金以外の相続財産が300万円であった場合、相続人間の不公平感(兄1100万円、姉と私は各100万円)は否めません。

 そこで、このような相続人間の不公平な事態を回避するために、「生命保険金を特別受益に準じて扱う」べきであるとする判例・学説があります。


2) 持ち戻しとは

 共同相続人の中に、死亡した被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいた場合、相続に関してこの相続人が他の相続人と同じ相続分を受けることになるのは、不公平です。

 そこで、民法903条は、共同相続人間の公平を図るために遺贈や贈与などを特別な受益、すなわち、「相続分の前渡し」とみて、計算上それを相続財産に加算して相続分を計算することにしてあります。これを「持ち戻し」といいます。

 判例や学説が「生命保険金を特別受益に準じて扱う」というのは、生命保険金についても、民法903条で定められている遺贈や贈与と同じように、「相続分の前渡し」とみて、計算上それを相続財産に持ち戻して相続分を計算すべきということです。


3) 生命保険金が持ち戻しとなる場合があるとした最高裁判決

 最高裁平成16年10月29日判決は、原則として死亡保険金は特別受益財産ではないものの、「死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。

 上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。」として、死亡保険金が特別受益に準じて持ち戻しの対象になる場合があることを判示しました。

 この最高裁判決は、結論としては、死亡保険金の持ち戻しを否定しましたが、事案の内容は、遺産の総額が約6400万円であるのに対し、保険金額が約574万円に過ぎず、遺産総額に対する割合は約9%に過ぎないという事案でした。

 また、生命保険金の特別受益性について、これを否定した事例が下級審にもりますが、遺産総額に対する生命保険金額の割合が小さいものばかりです。
@ 東京高判平成10年6月29日判タ1004号223頁
遺産総額10億円超 保険金2125万円(2%)
A 高松高決平成11年3月5日家月51巻8号48頁
遺産総額1億2000万円弱 保険金1072万円(9%)
B 神戸家審平成11年4月30日家月51巻10号135頁
遺産総額1億円強 保険金330万円 (3%)

 そして、上記Aの決定では、生命保険金の特別受益性を否定した理由として、「被相続人が保険契約をしたのは、同人と相手方夫婦間に子供がなかったことなどから、被相続人死亡後の相手方の生活を支える糧とするためであったこと」が考慮されました。

 また、Bの審判では、生命保険金の特別受益性を否定した理由として、「それが受益者が被相続人の配偶者として執り行うべき葬儀費用等に相当する金額であること」が考慮されました。

 なお、このBの審判は、「共同相続人間の実質的公平という観点から原則として同条の特別受益に準じて扱うべきものであると解される。」として、生命保険金については、原則として特別受益として扱うべきだと言っていることは注目に値します。

 これに引き換え、生命保険を特別受益として扱うことを肯定した大阪家審昭和51年11月25日家月29巻6号26頁の事例では、遺産総額2200万円 保険金1000万円であって、遺産に占める割合が約45%と高いものでした。

※この問題でお困りの際は、当事務所にご相談下さい
渡辺・玉村法律事務所 
弁護士:玉村 匡


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◆ 京都地方裁判所は、日本郵政公社に「支払え」と画期的な判決 ◆続報!弁護士:玉村 匡 (2011.10.07)

どんな事件?
 遺言で、「簡易保険の保険金を含めて遺産をあげる」と書いて貰ったのに、郵便局が保険金を支払ってくれない。・・・詳細は、『2006.09.02のコラム』をご一読願います。

◆京都地方裁判所は、日本郵政公社に「支払え」と画期的な判決◆のその後はどうなったの?

この問題については、京都地方裁判所が、平成18年7月18日、郵便局側に支払を命じる画期的な判決を出したことは、既にお伝えしているとおりですが、この判決については、第1審で確定し、無事保険金が支払われています。
解説
 さらに、次いで、私が手がけた東京地方裁判所平成20年8月27日判決においても、原告全面勝訴判決が出ました(これも、第1審で確定し、無事保険金が支払われています。)。
そして、嬉しいことに、私がアドバイスした案件についても、各地で勝訴判決を得ています(福岡地方裁判所大牟田支部平成22年11月5日判決ほか)。
 上記のように、判例が積み重ねられ、論点が整理されてきたことに伴い、提訴から判決まで、比較的スピーディーに解決できるようになりました。私が平成23年3月に名古屋地裁に提訴した事件においては、半年も経たないで全面勝訴判決が出ました(名古屋地方裁判所平成23年8月5日判決。これも第1審で確定し、無事保険金が支払われています。)。
 もっとも、このように、原告勝訴が続いても、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構は、「簡易保険の受取人欄」の記載から形式的に判断する事務の取り扱いを変更しようとはしていません。そのため、未だに故人の遺志に反する取り扱いは改善されておらず、本来受取人となるべき人が泣き寝入りしているケースが多数あると考えられます。

※この問題でお困りの際は、当事務所にご相談下さい
渡辺・玉村法律事務所 
弁護士:玉村 匡


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◆ 京都地方裁判所は、日本郵政公社に「支払え」と画期的な判決 ◆弁護士:玉村匡 (2006.09.02)

どんな事件?
 A子さんは、結婚をして2人の子供をもうけましたが、その後離婚しました。離婚後は一人で生活し、いつの間にか子供とも音信不通になってしまいました。
 A子さんは、将来のためにと、離婚後に簡易生命保険に加入しましたが、受取人を指定しませんでした。数年前から病気になりましたが、子供らの所在は分からずじまいで、A子さんは妹のB子さんにずっと世話をしてもらいました。
 A子さんは、そのことにとても感謝し、「B子さんに、すべての財産を譲ります。」と公正証書で遺言をしました。そして亡くなられました。その後、B子さんは郵便局に保険金の支払いを請求しましたが、拒否されたのです。

どうして郵便局は、保険金を支払わないと言ったの?
 日本郵政公社は、「簡易生命保険法の規定では、簡易保険の証券の受取人欄に保険金受取人を誰にするかを指定していないときは、『被保険者の遺族(このケースの場合だと、A子さんの子ら)』が保険金受取人となる。そうしないと、遺族と遺贈を受けた人の両方に保険金を支払わなければならない危険がある。だから、B子さんには支払わない。」と言いました。
 でも、簡易生命保険法第55条1項2号の規定は、「受取人は指定がない場合は遺族となる」と規定されているのであって、「簡易保険の証券の受取人欄に名前が書いていないとダメ」とは書いていません。
 そこでB子さんは、私に助けを求めてこられました。

裁判所は、どう言ったの?
 裁判所は「保険契約者が公正証書を作成した場合に代表されるように、誰を受取人にするかについての保険契約者の意思表示の存在およびその時期が明確な場合であれば、保険証券に受取人を記載しなくても、保険契約者の当該意思表示は、受取人の指定として有効である。
 このように解しても、受取人が日本郵政公社にその旨の通知をしない限りは、日本郵政公社はそのような受取人指定の事実があったことを前提としなくてもよいことになっているので、保険金を二重に支払わなければならないという危険はないから、不利益はない。」として、日本郵政公社の主張を退け、B子さんの訴えを全面的に認めたのです。

まとめ
 私は、日本郵政公社が、事務処理の簡便を計って、このように簡易生命保険法第55条1項2号の規定を極端に形式的に厳格に解釈してきたことにより、これまでにも、故人の遺志に明らかに反する不当な取り扱いがなされてきたのではないかと心配しています。
 また、今回は簡易生命保険が対象でしたが、生命保険会社の生命保険契約にも同じことがいえるのです。
 みなさん方の中で、このようなことにお心当たりのある方は、このケースが新聞報道(平成18年8月1日毎日新聞夕刊)されていますので、その記事を見せてあげるなどして教えてあげて下さい。
※所見と新聞報道をプリントされる場合は、
  「京都地方裁判所は、日本郵政公社に「支払え」と画期的な判決(PDFファイル)」が鮮明です。
渡辺・玉村法律事務所 
弁護士:玉村 匡


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